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見出しブログ&日誌

ブログ&業務日誌〜提言・苦言・解説etc〜

2015年6月25日(木)
解雇の金銭補償制度への誤解?

先般、不当解雇に対する金銭補償制度の導入に関して、規制改革会議
の答申がなされた。

ここで検討されている制度は、「裁判」にて不当解雇であることが
確定した場合に、従業員が望むならば、職場復帰せずに金銭補償を
受けた上で雇用契約を解消することを認めるものである。

ここで注目したいのは、不当解雇であることが「裁判」にて確定
した場合に限られていることである。ここにいう「裁判」とは、
世間一般でいうところの「訴訟」のことであり、あっせんや労働審判
は含まないのである。

ここ10年ほどの間で、解雇を含む個別労働紛争の解決手続が充実した。
訴訟以外にも、労働審判、労働局あっせん、労働委員会あっせん、
社労士会などの民間ADRセンターあっせんなど、訴訟より迅速に解決
を図れる手続が整備されたのである。ほとんどの個別労働紛争は、
これら訴訟以外の手続で解決されている。

なぜか?それは、訴訟は多額の費用がかかるからである。この点、
労働審判やあっせんならば、訴訟ほどの費用をかけずに済む。
仮に、不当解雇に対する金銭補償制度が導入されても、この事実
が変わるわけではない。依然として、訴訟で不当解雇を確定させる
には、労使双方、多額の訴訟費用を負担しなければならないのだ。

不当解雇が訴訟で認められる確率は、五分五分ぐらいであると
いわれる。解雇される従業員には、少なくとも裁判所が不当とは
認めない、それなりの理由があるケースも多いのである。

また、不当解雇に対する金銭補償制度が導入されたからといって、
労働契約法の定める解雇規制そのものが緩和されるわけではない。

したがって、不当解雇に対する金銭補償制度が導入されたとしても、
ゆめゆめ安直な解雇を行ってはならない。従前どおりに、解雇回避
の努力を尽くさなくてはならないのである。

2015年6月17日(水)
学校法人専修大学事件最高裁判決についての解説と若干の考察

【本件の争点】
  労働基準法19条1項の適用に関して、同法81条にいう同法75条の
 規定によって補償を受ける労働者に、労災保険法の療養補償給付を
 受ける労働者が含まれるか。

【原審:東京高裁平成25年7月10日】
  原判決の要旨は次のとおり。
  労働基準法81条は、労災保険法に基づく療養補償給付を受けて
 いる労働者については何ら触れていない。
  そのため、労働基準法81条にいう同法75条の規定によって補償を
 受ける労働者に、労災保険法の療養補償給付を受ける労働者が含ま
 れると解するのは困難である。
  したがって、労災保険法の療養補償給付を受けている労働者は
 打切補償の対象となる労働者に当たらないので、労働基準法19条
 1項ただし書による解雇制限の例外には当たらない。
  よって、本件解雇は労基法19条1項本文の解雇制限に反し無効。

【最高裁の判断】
1 労災保険法の療養補償給付を受ける労働者が、療養開始後3年を
 経過しても疾病等が治らない場合、使用者は、当該労働者につき、
 労働基準法81条の規定による打切補償の支払をすることにより、
 同法19条1項ただし書の適用を受けることができる。
  その理由は次のとおり。
(1)a. 労災保険法の目的は、業務災害に対し迅速かつ公正な保護を
  するために労災保険制度を創設すること等である。
  b. 労働基準法第8章の規定する使用者の災害補償義務と、労災保険
  法12条の8第1項が規定している保険給付の関係については以下の
  とおりである。
  @労災保険法12条の8第1項に定める各保険給付は、労働基準法
  第8章において使用者が災害補償を行うべきものとされている
  事由が生じた場合に行われる(労災保険法12条の8第2項)。
  A労災保険法12条の8第1項に定める各保険給付の内容は、労働
  基準法第8章の定める災害補償の内容にそれぞれ対応している。
  c. 上記のa.及びb.に鑑みると、業務災害に関する労災保険制度は、
  労働基準法により使用者が負う災害補償義務の負担の緩和を図り
  つつ、被災した労働者の迅速かつ公正な保護を確保するため、
  使用者の災害補償に代えて保険給付を行う制度である。
   したがって、労災保険法に基づく保険給付の実質は、使用者の
  労働基準法上の災害補償義務を政府が保険給付の形式で行うもの
  と解するのが相当である。
(2) 労働基準法81条の定める打切補償の制度趣旨は、長期間療養中の
 労働者に対する災害補償義務及び契約上の負担から、使用者が免れ
 ることができるようにすることである。
  上記(1)を踏まえると、労災保険法に基づく保険給付が行われて
 いる場合には、労働基準法が使用者に義務づけている災害補償が
 実質に行われているといえる。そして、使用者自らの負担により
 災害補償が行われている場合と、これに代わるものとして労災保険
 法に基づく保険給付が行われている場合とで、労働基準法19条1項
 ただし書の適用の有無につき取扱いを異にすべきとはいい難い。
(3) 労災保険法に基づく保険給付が行われている場合には、打切補償
 として相当額の支払がされても、傷害又は疾病が治るまでの間は、
 労働者は労災保険法に基づく療養補償給付を受けることができる。
 したがって、同項ただし書の適用の有無につき異なる取扱いがされ
 なければ労働者の利益の保護を欠くことになるともいい難い。
2 本件の打切補償金の支払は、労働基準法81条の規定による打切
 補償を行ったことに当たる。
  したがって、同法19条1項ただし書きの規定により、同項本文の
 解雇制限の適用はなく、本件解雇は同項に違反するものではない。
3 解雇の有効性に関する労働契約法16条該当性の有無等について
 更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻す。

【解説・考察】
1 労働災害により休業中の労働者を解雇することは原則禁止されて
 いるが。ただし、打切補償金として一定額を支払うことでこの解雇
 制限が解除される(労働基準法19条1項)。
  原審及び第1審は、労災保険制度の独自性や文言を重視して、
 労災保険法による療養補償給付を受けているに過ぎない労働者に
 ついては、打切補償金を支払っても休業中の解雇はできないとした。
  これに対して、最高裁は、労働基準法の定める災害補償制度と
 労災保険制度の共通性・補完性や、労災保険制度の立法趣旨を重視
 して、労働基準法の療養補償がなされた場合と同様に、打切補償金
 を支払うことによる解雇制限の解除を認めた。
  もっとも、解雇制限が解除されても、直ちに解雇が有効となるわけ
 ではない。別途、解雇権濫用に当たるか否かの検討を要する。
2 今後は、打切補償を行った上で被災労働者を解雇することの是非は、
 労働基準法19条第1項ではなく、労働契約法16条(解雇権濫用論)の問題
 として争われることになる。長期間療養のために休業中であることや、
 支払済みの打切補償金の額などの事情は、解雇権濫用の有無を判断
 するための事情の一要素として考慮されることになる。
3 現在、政府与党は、一定額の金銭支払を条件とする新たな解雇制度
 の導入を検討している。本事件の差戻審において、専修大学が労働者
 に支払った打切補償金その他の金銭をどのように評価するだろうか。
 解雇の金銭解決論の妥当性に関する試金石になるかもしれない。
4 最後に、労働者が解雇されて失業した場合、厚生年金及び健康保険
 (いわゆる社会保険)から脱退して、国民年金や国民健康保険に移る。
 一般に、給付の面でも保険料の面でも社会保険の方が有利であるから、
 労働者は解雇されることで、社会保障の面でも一定の不利益を被る
 ことになる。この点も解雇権濫用の判断要素とされるべきであろう。

2015年6月15日(月)
マイナンバー法改正と日本年金機構情報漏洩事件

先月、マイナンバー法と個人情報保護法の改正法案が衆議院を通過して、
現在、参議院に付託されている。
ところが、先日明らかになった日本年金機構情報漏洩事件を受けて、
参議院での審議がストップしている。
結論から言えば、まだマイナンバー制度が動き出していない現時点では、
改正法案の審議は拙速すぎる。
企業も労働者も消費者も十分にマイナンバー制度への準備が整っていない。
政府の対応は、浮き足立ったような状態といえるのではないか。
日本年金機構の今回の不祥事は、4つの安全確保装置(組織的安全確保措置、
人的安全確保措置、物理的安全確保措置、技術的安全確保措置)すべてに
おいて不備があったことが明らかになっている。
現在準備中の企業は、これを他山の石としなければならない。
だが、通知カードの送付が開始する10月までの時間は、長くはない。
まずは、改正よりも、現行法の円滑な施行に力を注ぐべきである。

2015年6月15日(月)
ブログ始めました

本日からブログを始めます。
不定期更新ですが閲覧していただければ幸いです。

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